フレイル予防は「食事・運動・社会参加」が鍵。対策とチェック方法
フレイル(加齢による心身の衰え)の予防は、タンパク質中心の食事、下半身を鍛える運動、他者との社会参加という3つの柱を日常に取り入れることが基本です。加齢による避けられない現象と思われがちですが、早期に適切な対策を行うことで健康な状態へ戻せる可能性があります。本記事では、状態を把握するための判定基準から、今日から始められる具体的な予防策までを順に整理します。
1.フレイルとは加齢による心身の衰えを指す状態
フレイルは、年齢を重ねるにつれて筋力や認知機能が低下し、生活機能が落ちた状態を指します。放置すると要介護状態に進むリスクが高まります。
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観点 |
要点 |
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定義 |
健康な状態と要介護状態の中間に位置する段階 |
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回復の可能性 |
早期に気づき対策を行うことで健康な状態へ戻る(可逆性) |
参考:厚生労働省「そのカギを握るのはフレイル予防だ」
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健康と要介護の中間地点に位置する
フレイルは、自立して生活できる健康な状態と、日常生活にサポートが必要な要介護状態の中間に位置づけられます。日本老年医学会の提唱により、身体的・精神的・社会的な衰えが複合的に絡み合う状態として広く認知されるようになりました。単なる老化現象とは異なり、適切な介入を行わないと心身の機能が急激に低下していくリスクを抱えていると言えます。日々のちょっとした疲労感や活動量の低下を見逃さず、早い段階で変化に気づくことが予防の第一歩です。
参考:日本老年医学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」
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早期に生活習慣を見直せば健康な状態へ戻る可能性が高い
フレイルの最も重要な特徴は、適切な対策によって再び健康な状態へ戻れる「可逆性」を持っていることです。筋力や認知機能の低下を自覚した段階ですぐに生活習慣を見直せば、低下した機能を回復させていくことが可能です。
一方で一度要介護状態まで進んでしまうと、元の状態に回復させるには長い時間と労力がかかります。手遅れになる前に、日常生活の中で少しずつ予防を意識した行動を取り入れていくと効果的です。
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働く世代にもプレフレイルは広がっている
フレイルは高齢者だけの問題と捉えられがちですが、近年は40〜60代の働く世代においても、その前段階にあたるプレフレイルが広がっている点が指摘されています。
デスクワーク中心の生活による運動量の不足や、食事の偏りによるタンパク質不足といった習慣の積み重ねが、プレフレイルの引き金になると指摘されています。プレフレイルの段階で気づき、家庭と職場の双方から生活習慣を見直すことで、将来のフレイル進行を大きく抑えられると考えられます。
2.フレイルを引き起こす3つの連鎖と悪循環
心身の機能低下は単独で起こるのではなく、身体的・精神的・社会的な要因が互いに影響し合って進行します。1つの衰えが別の衰えを引き起こす連鎖を断ち切ることが求められます。近年は働く世代においても、これら3つの連鎖の入り口となる兆候が40〜50代のうちから現れるケースが確認されており、高齢期に入る前からの気づきが重要視されています。
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衰えの種類 |
発生する悪循環の要点 |
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身体的フレイル |
筋肉量が減少し、転倒リスクや疲労感が増大する |
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精神・心理的フレイル |
認知機能が低下し、意欲や活力が失われていく |
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社会的フレイル |
外出機会が減少し、孤立することで他の衰えを誘発する |
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筋肉量の減少(サルコペニア)が身体的な衰えを加速させる
加齢に伴って筋肉量が減少し、全身の筋力が低下するサルコペニアは、身体的なフレイルの中核をなす要因です。筋肉が減ると歩行速度が落ちたり、わずかな段差でつまずきやすくなったりと、日常生活の動作に直接的な支障をきたします。さらに活動量が低下することで食欲が減退し、栄養不足に陥ってさらに筋肉が減少するという負の連鎖につながるケースも珍しくありません。転倒や骨折のリスクも高まるため、早期から筋肉量の維持に努めることが望まれます。
サルコペニアは高齢者だけの問題ではなく、デスクワーク中心の生活で1日の運動量が慢性的に少ない場合、40〜50代のうちから筋肉量が緩やかに減少していく下地が形成されるケースもあります。座位時間の長さや通勤機会の減少は働く世代にとって身近なリスク要因であり、現役のうちから意識的に筋肉量を維持していく取り組みが将来のフレイル進行の抑制につながります。
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認知機能の低下やうつ傾向が精神的な衰えにつながる
身体の衰えと並行して、物忘れがひどくなったり、何事にも意欲が湧かなくなったりする精神・心理的な変化もフレイルの重要な側面です。加齢による脳機能の低下だけでなく、定年退職や配偶者との死別といったライフイベントの喪失感が、気分の落ち込みやうつ傾向を引き起こす引き金となります。
現役の働く世代においても、業務過多による慢性的な疲労や、役職変化・部署異動に伴うストレス、テレワーク下での孤独感などが同様の引き金となり得ます。
意欲が低下すると、外出や他者との会話を避けるようになり、結果として身体の活動量まで低下していく悪循環に陥りやすい傾向があります。認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と重なる部分も多く、早期の気づきと周囲のサポートが重要です。
【関連記事】メンタルヘルス対策は何から始める?企業の義務と効果的な4つのケアを解説
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閉じこもりなどの社会的な孤立が身体と精神の衰えを招く
他者との関わりが減り、社会的に孤立した状態になることは、身体的・精神的なフレイルの入り口として警戒すべき現象です。外出の機会が失われると歩く時間が減り、それに伴って筋力が低下していくため、身体的な衰えが急速に進行します。
また、人と会話しない生活が続けば脳への刺激が減少し、認知機能の低下やうつ傾向といった精神的な衰えにも直結しかねません。働く世代にとっては、職場での日常的な会話や協働が最も身近で継続的な社会参加の場です。テレワークの定着や単身赴任などで職場・家庭の双方から人との接点が薄くなると、身体的・精神的な衰えの下地が現役期のうちから形成されかねません。地域のコミュニティや友人とのつながりに加え、職場内での交流を継続的に確保していくことは、健康を維持するための基盤として機能すると言えます。
3.フレイル予防の3つの柱(食事・運動・社会参加)
フレイルの進行を防ぐには、日々の生活習慣を総合的に見直すことが大切です。「食事」「運動」「社会参加」の3つの要素をバランスよく組み合わせます。
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予防の柱 |
具体的な要点 |
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食事(栄養) |
筋肉の維持に重要なタンパク質を毎食摂取する |
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運動(身体活動) |
ウォーキングやスクワットで下半身の筋力を保つ |
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社会参加 |
人との関わりを持ち、精神的・社会的な孤立を防ぐ |
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筋肉の材料となるタンパク質を毎食摂取する
筋肉量の減少を防ぐため、肉や魚、大豆製品などのタンパク質を毎回の食事で意識的に取り入れることが基本です。年齢を重ねるにつれて肉類を避けて粗食になりがちで、無意識のうちにタンパク質やエネルギーが不足する低栄養状態に陥りやすいとされています。1日3食しっかり食べることを前提とし、特に筋肉の合成を促す良質なタンパク質をこまめに補給すると効果的です。
働く世代においても、平日の昼食を職場で摂ることが多く、麺類や丼物といった炭水化物中心のメニューに偏ればタンパク質が不足しやすくなります。社員食堂では主菜に肉・魚・卵・大豆製品を選ぶ、外食やコンビニで済ませる日には主菜に加えてサラダチキンや味噌汁などのタンパク質源を1品足す、といった小さな工夫でも1日の摂取量を底上げできます。食事準備の負担が大きい場合は、市販の惣菜や配食サービスを上手に活用する選択肢も検討に値します。
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日常生活の中で無理なく下半身の筋肉を鍛える
身体機能の維持には、ウォーキングやスクワットなど、立つ・歩く動作の基本となる下半身の筋力トレーニングが適しています。激しいスポーツを行う必要はなく、通勤や買い物といった日常の動きの中で意識して身体を動かす時間を増やすことが重要です。1日の中で座りっぱなしの時間を減らし、こまめに立ち上がるだけでも筋肉への良い刺激となります。
デスクワーク中心の職場では、意識しないと1日の歩数が数千歩に届かないケースも珍しくありません。エレベーターの代わりに階段を利用する、1時間ごとに立ち上がって軽くストレッチをする、昼休みに10〜15分ほどのウォーキングを取り入れるといった行動でも、下半身への負荷を継続的に確保できます。膝や腰に痛みがある方は、椅子に座ったままできる足踏み運動やかかと上げなど、体に負担の少ない方法から始めていくことが一般的です。
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職場や地域で他者とのつながりを持つ
他者とコミュニケーションをとる機会を継続的に持つことがフレイル予防につながります。社会的なつながりが減少し孤立状態になると、外出の頻度が減り、結果として運動量や食事量が低下する悪循環に陥るケースも珍しくありません。他者との会話や共同作業への参加は、脳への刺激となり認知機能の低下を防ぐ役割も果たします。
働く世代にとっては、職場での日常的な会話やチームでの協働そのものが社会参加の大きな柱となります。テレワーク中心の勤務スタイルの場合は、意識的にオンラインでの雑談時間を設けたり、出社日に同僚とランチを共にしたりすることで、対人接触の機会を確保しやすくなります。加えて、定年後の孤立を防ぐ観点からも、現役時代のうちから地域の集まりや趣味のサークル、ボランティア活動といった職場外のコミュニティを並行して育てておくと効果的です。
4.自身や家族のフレイル状態を確認するチェック方法
現在の状態がフレイルに該当するかどうかは、客観的な指標を用いて確認できます。日本向けに作成された「日本版CHS基準(J-CHS基準)」など、公的に示されている判定基準をもとに、日常の変化を点検しましょう。
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判定の観点 |
確認する要点 |
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日本版CHS基準 |
体重減少、疲労感、活動量の低下など5つの項目で判定する |
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日常のサイン |
以前より歩くのが遅くなった、疲れやすくなった等の変化 |
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体重減少や歩行速度の低下など5つの基準で判定する
フレイルの判定には、体重減少・筋力低下・疲労感・歩行速度の低下・身体活動量の低下という5つの項目からなる「日本版CHS基準」を用いるのが一般的です。このうち3項目以上にあてはまる場合はフレイル、1〜2項目の場合は予備軍であるプレフレイルと判定されます。意図せずに半年で2〜3kg以上体重が減っていたり、横断歩道を青信号の間に渡りきれなくなったりした場合は、すでに心身の衰えが進行しているサインです。定期的にこの基準を使って自己チェックを行い、現在の状態を客観的に把握しておくことが推奨されます。
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日常のささいな変化がフレイルのサインとなる
医学的な基準に加えて、普段の生活の中で見られるちょっとした変化もフレイルに気づくための重要な手がかりです。「ペットボトルのキャップが開けにくくなった」「以前よりも外出するのが億劫になった」といった些細な行動の変化は、筋力や意欲の低下を反映した結果と言えます。
家族と離れて暮らしている場合は、帰省した際の家の中の片付け状況や、冷蔵庫の中身を見ることで生活状態の変化を察知しやすくなります。加齢のせいだと軽く考えず、小さなサインを見逃さないように行動することが予防の鍵です。
まとめ
フレイルの予防は、食事・運動・社会参加の3つの柱を日々の生活に組み込み、健康と要介護の中間にある状態から健康な状態へ戻す取り組みです。家庭の時間だけで習慣を維持し続けるのは容易ではなく、働き盛りの世代にとっては平日の大半を占める職場が予防行動を取り入れやすい環境となります。ランチでのタンパク質摂取、階段利用やこまめな立ち上がり、同僚との交流といった業務の合間の工夫でも、3つの柱を無理なく実践できます。
近年は、従業員の健康寿命の延伸を経営課題と位置づけ、フィットネスプログラムや健康セミナーを取り入れる企業も増えています。個人・家族単位の予防に職場の仕組みを組み合わせることで、将来の要介護リスクの低減と、現在の生産性やエンゲージメントの維持を両立できると言えます。
<最後に>
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