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人的資本経営とは?注目される背景や実践ステップ・具体的な企業事例

人的資本経営の導入や情報開示でお悩みの方に向けて、従来の考え方との違いや注目される背景、実践のための具体的なステップを解説します。実際の企業事例も紹介していますので、自社で人的資本経営を推進するヒントとしてお役立ていただけます。



人的資本経営の導入や情報開示を求められてお悩みの方に向けて、本記事では実践に向けた具体的な手順を解説します。

この記事では、人的資本経営の基本から注目される背景、実践のステップまでを網羅的に紹介しています。読み終わると、自社に合った人材戦略の構築と情報開示に向けた第一歩を踏み出せるようになります。


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1.人的資本経営とは

人的資本経営とはどのような概念なのでしょうか。まずは、基本的な定義と従来の考え方との違いについて整理していきます。経済産業省の「人材版伊藤レポート」によって広く知られるようになったこの言葉は、これからの企業成長において大きな役割を果たします。

比較項目 従来の人材マネジメント(人的資源) 人的資本経営(人的資本)
人材の捉え方 消費される「コスト・資源」 価値を生み出す「資本・投資対象」
評価の視点 短期的な業績や個人の目標達成度 中長期的な企業価値向上への貢献度
経営との関係 経営戦略に従属する人事制度 経営戦略と完全に連動した人材戦略
情報の扱い 社内向けの非公開情報 投資家など外部への積極的な開示情報
教育の目的 現在の業務に必要なスキルの習得 将来の事業創出に向けたリスキリング
個人の自律性 会社が主導するキャリア形成 個人が主導するキャリアと手挙げの文化
多様性の尊重 同質性を重視した組織構築 知と経験のダイバーシティを推進する環境
働き方の柔軟性 一律のルールによる管理 時間や場所にとらわれない柔軟な働き方

  • 人的資本経営の基本的な定義

人的資本経営とは、従業員が持つ知識やスキル、経験などを「資本」として捉える経営手法のことです。この概念は、人材への投資を通じてその価値を最大限に引き出し、結果として中長期的な企業価値の向上につなげることを目的としています。

これまでの経営手法では、人材にかかる費用は削減すべき対象として認識されがちでした。しかし人的資本経営においては、研修や福利厚生への支出を「将来のリターンを生むための投資」として評価し直すことが求められます。経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」においても、この視点の転換が示されています。企業が持続的に成長するためには、この新しい視座を取り入れることが大切です。

 参考:経済産業省「伊藤レポート 2.0

  • 従来の人材マネジメントとの主な違い

従来の人材マネジメントと人的資本経営とでは、人材に対する基本的なスタンスが大きく異なります。

これまでの人事管理は、あらかじめ決められた経営戦略を達成するために、必要な人員をいかに効率よく配置するかに主眼が置かれていました。

一方で人的資本経営では、経営戦略と人材戦略が双方向に影響を与え合う関係性を築きます。たとえば、新規事業を立ち上げる際に「どのようなスキルを持つ人材が社内にいるか」を起点として戦略を練り直すようなアプローチが該当するでしょう。

また、従来は社内に留めておいた従業員のスキルや育成状況に関するデータを、投資家などのステークホルダーに向けて積極的に開示する点も大きな違いといえます。この透明性の高さが、企業の信頼性を高めることにつながるはずです。

 【関連記事】人的資本経営と健康経営の違いとは?統合のメリットと成功事例を解説


2.人的資本経営が急速に注目を集める背景

なぜ今、多くの企業が人的資本経営へと舵を切っているのでしょうか。そこには、社会構造の変化や投資家の意識の変化など、複合的な要因が絡み合っています。ここでは、特に影響を与えている3つの背景について詳しく解説します。

注目を集める背景 企業に与える影響と課題 人的資本経営による解決策
ESG投資の拡大 非財務情報の開示が資金調達に直結する 人材育成の状況や多様性を数値化して投資家にアピールする
少子高齢化と人材不足 優秀な人材の獲得競争が激化している 働きがいや成長機会を提供し、従業員のエンゲージメントを高める
価値観の多様化 従来の画一的なキャリアパスが通用しない 自律的なキャリア形成を支援し、個人の持ち味を活かす配置を行う

  • 投資家からのESG投資に対する関心拡大

人的資本経営が注目される最大の理由は、投資家からの評価基準が変化してきたことにあります。

近年、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を重視するESG投資が世界的に定着しつつあります。投資家は、目先の財務的利益だけでなく、企業が中長期的に成長できるかどうかを判断するために、非財務情報である「人材への投資状況」を重視するようになりました。

人的資本が充実している企業は、変化の激しい市場環境においても柔軟に対応できると評価される傾向にあります。そのため、自社の人材戦略や育成の成果を定量的に示すことが、資金調達の面でも重要です。


  • 少子高齢化による慢性的な人材不足の深刻化

日本国内における少子高齢化の進行も、人的資本経営を推進する大きな要因となっています。労働力人口が減少する中で、企業が優秀な人材を確保し続けることは容易ではありません。

採用市場が売り手市場となる状況下では、従業員から選ばれる企業になるための努力が求められます。単に給与水準を上げるだけでなく、個人の成長を支援する環境や、働きがいを感じられる組織風土を構築することが大切です。従業員一人ひとりの価値を最大限に引き出す人的資本経営は、限られた人材で高い生産性を維持するための有効な手段といえるでしょう。


  • 働き方の多様化と個人の価値観の変化

働き方の多様化と、働く人々の価値観の変化も見逃せないポイントです。

新型コロナウイルスの影響を経て、テレワークや副業、フレックスタイム制など、時間や場所にとらわれない働き方が一般化しました。同時に、仕事に対するモチベーションの源泉も多様化しており、会社から与えられた役割をこなすだけでなく、自己実現や社会課題の解決にやりがいを見出す人が増えています。

企業側は、こうした多様な価値観を受け入れ、個人の強みを活かせるような仕組みを整える必要があります。自律的なキャリア形成を支援することが、結果として組織全体の活力を高めることにつながるはずです。


3.人的資本経営を実践するフレームワーク

人的資本経営を実際の業務に落とし込むためには、共通の指針となるフレームワークを理解しておくことが推奨されます。ここでは、経済産業省が示した「人材版伊藤レポート」に基づく視点と要素を解説します。

フレームワークの分類 具体的な項目名 実践におけるポイント
3つの視点 経営戦略と人材戦略の連動 経営陣が主導して、事業目標の達成に必要な人材要件を明確に定義する
3つの視点 As is-To beギャップの定量把握 目指すべき人材の姿と現在の状況をデータで比較し、課題を可視化する
3つの視点 企業文化への定着 策定した人材戦略を単なる制度で終わらせず、日々の行動に落とし込む
5つの共通要素 動的な人材ポートフォリオ 環境変化に合わせて、必要なスキルを持つ人材を迅速かつ柔軟に再配置する
5つの共通要素 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン 多様な背景を持つ人材を登用し、異なる視点を掛け合わせてイノベーションを生む
5つの共通要素 リスキル・学び直し デジタル技術など新たなスキルを獲得するための学習機会を会社が提供する
5つの共通要素 社員エンゲージメント 個人の目指す方向と会社の方向性をすり合わせ、自発的な貢献意欲を高める
5つの共通要素 時間や場所にとらわれない働き方 リモートワークなどを活用し、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整える

 

  • 人材版伊藤レポートに基づく3つの視点

経済産業省の「人材版伊藤レポート」では、人的資本経営を実践するための土台として「3つの視点」が提示されています。

第一の視点は「経営戦略と人材戦略の連動」です。これは、経営目標を達成するために必要な人材像を定義し、そこから逆算して採用や育成の計画を立てることを意味します。

第二の視点は「As is-To beギャップの定量把握」です。理想とする人材ポートフォリオ(To be)と現在の状況(As is)を比較し、不足しているスキルや人数を客観的なデータで把握します。

第三の視点は「企業文化への定着」です。いくら立派な制度を作っても、現場で活用されなければ意味がありません。経営層が自らの言葉で語りかけ、組織全体に新しい価値観を浸透させることが重要です。

 参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0


  • 人的資本経営を支える5つの共通要素

3つの視点に加えて、具体的な施策を検討する際の軸となるのが「5つの共通要素」です。

一つ目は「動的な人材ポートフォリオ」であり、事業環境の変化に応じて人材を柔軟に再配置する仕組みを指します。

二つ目は「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」で、多様な人材が互いに尊重し合い、イノベーションを生み出す環境を作ることです。

三つ目は「リスキル・学び直し」であり、従業員の継続的なスキルアップを支援します。

四つ目は「社員エンゲージメント」の向上です。

そして五つ目が「時間や場所にとらわれない働き方」の提供となります。これら5つの要素をバランスよく推進していくことが、人的資本経営の成功につながると考えられます。

 参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0


4.人的資本情報の開示ルールと主な基準

人的資本経営の推進とセットで語られることが多いのが、情報の外部開示です。近年、国内外で開示に関するルール整備が進んでおり、企業には迅速な対応が求められています。ここでは主要な基準について確認していきます。

開示基準・ガイドライン 適用範囲と主な対象 求められる開示内容の特徴
有価証券報告書
(内閣府令改正)
上場企業など有価証券報告書を提出する企業 人材戦略、従業員給与の決定方針、平均給与の前年比増減率など
ISO30414 企業規模を問わず、国際基準に関心のある企業 組織文化、採用、後継者育成など11領域に基づく定量データ

  • 有価証券報告書における開示拡充の概要

日本国内において、上場企業などを対象とした人的資本情報の開示ルールが厳格化されています。

金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令」を改正し、有価証券報告書における記載事項を順次拡充してきました。20263月期以後に終了する事業年度からは、さらに一歩踏み込んだ内容が求められるようになっています。

具体的には、連結ベースの企業戦略と関連付けた人材戦略の記載や、それを踏まえた従業員給与等の決定方針の明示が必要となります。また、提出会社の従業員の平均給与について、対前年比増減率を開示することも義務付けられました。

こうした制度変更により、企業はより透明性の高い情報提供を行うことが重要です。

 参考:「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について:金融庁


  • 国際的なガイドラインとなるISO30414の役割

国内のルールだけでなく、国際的なガイドラインへの理解も深めておく必要があります。

その代表格が、国際標準化機構が発行した「ISO30414」です。これは、組織の人的資本に関する情報を定量的・定性的に測定し、報告するための世界初の国際規格として知られています。

 ISO30414では、コンプライアンスやダイバーシティ、組織文化、後継者育成など、11の領域にわたる人的資本指標が定められています。この規格に沿ってデータを収集・開示することで、海外の機関投資家に対しても客観的で比較可能な情報を提供することが可能になります。自社の開示体制を構築する際の参考にすると良いでしょう。

 参考:野村資本市場研究所「人的資本の報告ガイドライン国際規格 ISO30414


5.人的資本経営を自社で推進する具体的なステップ

ここからは、自社で人的資本経営を導入し、推進していくための具体的な手順を解説します。計画の立案から実行、そして検証に至るまでの一連の流れを把握しておくことが大切です。


推進ステップ 各段階における具体的なタスク 実施する際の注意点
1. 経営戦略と人材戦略の
 すり合わせ
経営陣と人事部門が対話を行い、事業目標の達成に必要な人材像を言語化する 人事部門単独で進めず、経営トップのコミットメントを必ず確保すること
2. 目指すべき姿と現状の
 ギャップ分析
理想とする人材像と現状の従業員データ(スキル・経験・エンゲージメント等)を比較し、ギャップを可視化する データの正確性を担保し、プライバシーへの配慮を徹底すること
3. アクションプランの策定 採用、育成、配置、評価制度の見直しなど、ギャップを埋めるための具体策を立案する 短期的な効果を追い求めず、中長期的な視点で優先順位をつけること
4. 施策の実行とKPIによる
 効果測定
研修の実施や新たな評価制度を運用し、定期的に設定した指標(KPI)を測定する 現場の負担になりすぎないよう、ツールを活用して自動化を図ること
5. ステークホルダーへの
 情報開示
統合報告書や有価証券報告書を通じて、取り組みの進捗と独自のストーリーを発信する 他社の模倣に終始せず、自社らしさが伝わる文脈でストーリーを構成すること

 

  • 経営戦略と人材戦略のすり合わせ

最初のステップは、経営戦略と人材戦略のベクトルを合わせることです。

企業が今後5年、10年先に向けてどのような事業展開を目指しているのかを確認し、その実現にはどのようなスキルやマインドを持つ人材が必要なのかを定義します。

このプロセスでは、人事部門が単独で動くのではなく、経営トップや各事業部の責任者を巻き込んだ議論の場を設けることが求められます。事業戦略と切り離された人事制度を作っても、現場で機能することはありません。自社の競争力の源泉がどこにあるのかを再確認し、それを支える人材像を明確に言語化していく作業となります。


  • 目指すべき姿と現状のギャップ分析

理想とする人材像が定義できたら、次に行うのが現状とのギャップ分析です。

現在社内にいる従業員のスキルセット、年齢構成、パフォーマンス、モチベーションの状態などをデータとして収集し、可視化します。このとき、客観的な数値を活用することが重要です。たとえば「デジタル領域に強い人材が不足している」という感覚的な課題を、「〇〇の資格を持つ従業員が全社で〇名不足している」といった具体的なデータへと変換していきます。このギャップの大きさと性質を正確に把握することで、次に打つべき施策の方向性が自然と定まってくるはずです。


  • アクションプランの策定

ギャップ分析の結果をもとに、課題を解消するための具体的なアクションプランを策定します。

採用・育成・配置・評価制度のそれぞれについて見直しの方向性を整理し、優先度を付けながら取り組む順序を決めていきます。重要なのは、短期的な成果にとらわれすぎず、中長期の視点で施策を組み立てることです。

たとえば即戦力採用で当面の人材不足を補いながら、並行して社内人材のリスキリングを進めるといった、複数の施策を組み合わせたアプローチが現実的です。経営戦略との整合性を常に意識しながら、実行可能な計画として落とし込んでいきましょう。


  • 具体的な施策の実行と効果測定

策定したアクションプランは、実行に移して初めて成果につながります。採用計画の見直し、リスキリングのための教育プログラムの導入、あるいは柔軟な働き方を支援する制度の構築などが具体的な施策として考えられます。

施策を実行する際には、あらかじめ進捗を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定しておくことが大切です。たとえば「研修の受講率」や「エンゲージメントスコアの改善幅」などを指標とし、定期的に効果を測定します。うまくいっていない部分があれば原因を分析し、柔軟に軌道修正を図るサイクルを回していくことが推奨されます。

 【関連記事】エンゲージメントスコアとは?数値化メリットや測定方法を解説します


  • ステークホルダーへの情報開示

人的資本経営の取り組みは、社内で完結するものではありません。投資家や求職者、取引先といったステークホルダーに向けて、自社の人材戦略と進捗を積極的に発信することが求められます。

統合報告書や有価証券報告書などを活用し、数値データとともに取り組みの背景や意図を丁寧に説明することが重要です。その際、他社の開示内容を横並びで模倣するのではなく、自社のビジネスモデルや強みと結びついたストーリーとして構成することが求められます。「なぜこの指標を重視するのか」「どのような人材が自社の価値創造を支えているのか」を独自の言葉で語ることが、ステークホルダーからの信頼獲得につながると考えられます。


6.人的資本経営を実践している企業事例

理論やフレームワークだけでなく、実際に人的資本経営を推進している企業の事例を知ることで、自社への応用イメージが湧きやすくなります。ここでは、特徴的な取り組みを行っている2社の事例を紹介します。

企業名 人材戦略の核となる考え方 独自の指標や具体的な取り組み内容
株式会社丸井グループ 企業文化を経営のOSと位置づけ、
社員の自発性を引き出す
人的資本投資のリターンをIRR12.7%と算出・開示し、「手挙げの文化」を推進
オムロン株式会社 企業理念の実践にこだわり、
会社と社員の相互成長を目指す
「人的創造性(付加価値額÷人件費)」という指標を設定し、適所適材や能力開発を強化

  • 株式会社丸井グループにおける企業事例

株式会社丸井グループは、長年にわたって企業文化の改革を進め、人的資本経営の先進企業として高く評価されています。同社は企業文化を「経営OS」と位置づけ、社員一人ひとりの主体性を引き出す「手挙げの文化」を定着させてきました。

特筆すべきは、人的資本投資を将来の事業創出への投資として捉え、そのリターンをIRR(内部収益率)12.7%として独自に算出し、投資家に提示している点です。単なる制度設計にとどまらず、風土改革から着手して成果を定量化している姿勢は、多くの企業にとって参考になる事例といえます。

 参考:丸井グループ「人的資本経営(PDF)

 参考:人的資本投資|投資家情報|株式会社 丸井グループ MARUI GROUP CO., LTD.

  • オムロン株式会社における企業事例

オムロン株式会社も、独自の視点で人的資本経営を推進している代表的な企業です。同社では、人的資本経営が企業価値向上にどれほど寄与しているかを測る定量的な指標として「人的創造性」を定義しています。

これは「付加価値額÷人件費」というシンプルな計算式で表され、全社でも部門単位でも状況を把握できるよう工夫されています。この人的創造性を高めるために、「人財の最適な配置」「人財の能力獲得・強化」「保有能力の発揮」という3つの因子を設定しています。エンゲージメントを高めながら、社員個々人がもつ多様で多彩な個性や能 力を最大限発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

 参考:人財アトラクション | サステナビリティ | オムロン

 参考:オムロン株式会社「統合レポート2023 CHROメッセージ(PDF


7.人的資本経営を推進する際の注意点

人的資本経営を進める過程では、いくつか陥りやすい落とし穴が存在します。せっかくの取り組みを失敗に終わらせないために、事前に意識しておくべき注意点を整理しておきます。

想定される失敗要因 企業に与える悪影響 失敗を防ぐための具体的な対策
開示の目的化 指標を整えることだけがゴールになり、実態が伴わない 開示はあくまで手段と割り切り、自社の価値向上にどうつながるかのストーリーを重視する
経営と現場の認識のズレ 現場の負担ばかりが増え、従業員の不満や離職を招く 経営陣が背景や目的を丁寧に説明し、現場からのフィードバックを吸い上げる仕組みを作る

 

  • 情報開示そのものを目的にしないための意識づけ

人的資本経営に取り組む際、もっとも注意すべきなのは「情報開示そのものが目的化してしまうこと」です。

内閣府令の改正やガイドラインの整備が進む中で、多くの企業が「何をどのように開示すればルールを守れるか」という点に意識を奪われがちです。しかし、開示枠を埋めるための表面的な数値を集めても、企業価値の向上には寄与しません。

大切なのは、自社のビジネスモデルや経営戦略と、人材への投資がどのようにつながっているかという「ストーリー」を構築することです。指標の達成はあくまで中間目標であり、その先にある事業成長を見据えた運用を行うことが重要です。


  • 経営層と現場における認識のズレを防ぐ工夫

経営層が人的資本経営の重要性を理解していても、現場の従業員にその意図が正しく伝わっていなければ取り組みは前に進みません。現場の管理職からすれば、新しい評価制度の導入やデータ入力の作業は、単なる業務負担の増加と受け取られる可能性があります。

この認識のズレを防ぐためには、経営陣から現場に向けて、なぜこの変革が必要なのかを繰り返し対話する場を設けることが求められます。従業員にとってどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、現場の意見を取り入れながら制度をブラッシュアップしていくプロセスを組み込むことが、成功への近道といえるでしょう。

まとめ

本記事でお伝えした、人的資本経営に関する重要なポイントを簡潔に振り返ります。


  • 人材を消費する「資源」ではなく、価値を生み出す「資本」として捉えることが重要です
  • 経営戦略と人材戦略を連動させ、目指すべき姿と現状のギャップを定量的に把握することが求められます
  • 情報開示そのものを目的にせず、投資家や従業員との対話を通じて企業価値の向上につなげることが大切です

人材をコストではなく資本と捉える視点が、これからの持続可能な企業成長へとつながっていくはずです。


<最後に>


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