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ライフデザイン経営とは?経産省の定義やメリット・導入事例を解説

社員の離職やエンゲージメント低下に悩む人事担当者・経営者に向けて、経済産業省が提唱する「ライフデザイン経営」を解説します。人的資本経営との違いから、企業にもたらすメリット、具体的な施策、先進企業の導入事例までを網羅しました。自社で従業員の人生設計を支援し、企業価値を高めるための実践的なステップが分かります。

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社員の定着率低下や採用難に悩んでおり、従業員から選ばれ続ける魅力的な職場環境を作りたいと考えている方に向けて解説します。

この記事では、経済産業省が新たに提唱し注目を集めている「ライフデザイン経営」の全貌を、基礎から実践方法まで詳しくお伝えします。読み終わると、自社にライフデザイン経営を取り入れるメリットや、具体的な制度設計のステップが明確に理解できるようになります。

1.ライフデザイン経営とは?

ライフデザイン経営という言葉を最近ニュースなどで目にする機会が増えてきたと感じる方も多いのではないでしょうか。

これは企業が従業員に対して業務上のスキルアップを求めるだけでなく、人生設計そのものに寄り添い支援を行うという新しい考え方に基づいています。これまでの経営手法から一歩踏み込み、従業員一人ひとりの多様なライフステージに応じたサポートを提供することが重要視されています。

以下の表に、ライフデザイン経営とこれまでの代表的な経営モデルの違いを整理しますので、全体像を掴む参考にしてみてください。


経営モデルの名称

主な目的と焦点

企業が従業員へ提供する価値の方向性

ライフデザイン経営

個人のキャリアと人生両立を通じた企業価値向上

ライフステージに合わせた人生設計の主体的支援

人的資本経営

人材を資本と捉えた投資による中長期的な成長

業務スキル開発や自律的なキャリア形成への投資

健康経営

従業員の健康管理を通じた生産性の維持と向上

心身の健康維持に向けた予防や医療サポート


経済産業省が提唱するライフデザイン経営の定義

経済産業省は20258月に特設サイトを開設し、ライフデザイン経営の普及を推進しています。

同省の発表によると、ライフデザイン経営とは「社員がキャリアとライフを両立し、充実したライフデザインを実現できる環境を提供することで、人材の能力を最大限引き出し、企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義されています。

これまでの企業は、仕事のやりがいや職務スキルの向上機会を提供するにとどまる傾向がありました。しかし新しい定義では、家庭や住居、資産形成といった個人的な「ライフ」の領域も含めて包括的に支援することが企業に求められています。

参考:ライフステージを支えるサービス活用による多様な人材活躍を推進するための情報発信を行うウェブサイトを開設しました ~ライフデザイン経営で、社員のウェルビーイングをサポート~ (METI/経済産業省)

人的資本経営や健康経営など既存の経営モデルとの違い

すでに多くの企業が人的資本経営や健康経営といった施策に取り組んでいると思われます。

人的資本経営は従業員が持つスキルや能力を資本と見なし、積極的に投資を行うことで業績を伸ばすアプローチです。一方で健康経営は、従業員の心身の健康を管理し、病気による欠勤を減らして労働生産性を高めることを主眼に置いています。

これらに対してライフデザイン経営は、より従業員の「人生全体」に焦点を当てている点が特徴的です。健康状態や業務スキルだけでなく、結婚や介護、老後の資金設計など、生活基盤全体が充実するようなサポートを展開します。既存の経営手法を代替するものではなく、それらを土台としてさらに広範囲へ発展させた包括的な概念だと言えるでしょう。

【関連記事】健康経営戦略マップの作り方!5つのステップで解説、事例も紹介

ライフデザイン経営が求められる背景

なぜ今になって企業が従業員の私的な人生にまで踏み込んだ支援を行う必要があるのでしょうか。

最大の理由は、少子高齢化の進行に伴う構造的で深刻な人材不足にあります。

採用市場の競争が激化する中で、企業は新しい人材を獲得するだけでなく、今いる従業員に健康で長く働き続けてもらう必要があります。しかし、介護や育児などのライフイベントを機に、働き方との折り合いがつかず離職せざるを得ない従業員は後を絶ちません。

第一ライフ資産運用経済研究所が2023年に行った調査では、自身のライフデザインをしっかり設計している人ほど生活満足度が高い傾向にあるという結果が出ています。企業が従業員の人生設計を積極的にサポートしなければ、優秀な人材の確保がより難しくなる時代になりつつあると言えるでしょう。

参考:ライフデザイン30年史(1)ライフデザインの設計状況 ~緩やかな景気回復と老後への不安を背景とした設計率の上昇~ | 鄭 美沙 | 第一ライフ資産運用経済研究所


2.ライフデザイン経営を企業が導入するメリット

新しい経営モデルを導入するにあたり、企業側にとってどのようなリターンがあるのかは非常に重要な論点となります。単なる福利厚生の拡充として捉えるのではなく、経営戦略の一環として投資対効果を意識することが大切です。従業員の人生に寄り添うことが、結果的に企業の財務面や組織力に良い影響を与えます。

以下の表に、ライフデザイン経営を導入することによって期待できる主なメリットを視点別に整理しました。


メリットを得る主体

期待される具体的な効果

経営にもたらすインパクト

企業(組織全体)

優秀な人材の離職防止と採用競争力の強化

採用・育成コストの削減と安定した事業運営

従業員(個人)

仕事と生活の両立によるウェルビーイング向上

モチベーションの維持と主体的なキャリア形成

社会(外部環境)

多様な働き方の実現と経済循環の活性化

企業のブランドイメージ向上と社会的責任の達成


従業員の定着率向上と離職の防止

ライフデザイン経営を導入する最大のメリットは、優秀な従業員の離職を未然に防ぎ、定着率を大きく向上させられる点にあります。

従業員が退職を考えるきっかけは、職場の不満だけでなく、家庭環境の変化や将来の資金不安など、個人的な事情に起因することも少なくありません。企業がライフイベントを想定した支援体制を整えることで、従業員は「この会社なら長く働き続けられる」という安心感を持つことができます。

育児や介護と仕事を両立できる柔軟な制度があれば、キャリアの中断を余儀なくされるリスクを大幅に減らせます。結果として、これまで培ってきた知識やスキルを持つ人材の流出を防ぎ、企業の競争力を維持することに繋がります。

心理的安全性とウェルビーイングの向上による生産性改善

従業員が抱える私生活の不安やストレスを軽減することは、日々の業務における労働生産性の改善に直結します。

将来のキャリアや人生設計に対する漠然とした不安を抱えたままでは、目の前の仕事に集中して高いパフォーマンスを発揮することは困難です。ライフデザイン経営を通じて個人の悩みに寄り添い、解決に向けた情報提供を行うことで、従業員の心理的安全性が高まります。

心身ともに満たされた状態である「ウェルビーイング」が向上すれば、自発的に新しいアイデアを出したり、業務改善に取り組んだりする意欲が生まれます。一人ひとりの集中力とモチベーションが高まることで、組織全体の生産性が底上げされるという好循環が期待できるでしょう。

外部からの評価向上を通じた採用競争力の強化

ライフデザイン経営への積極的な取り組みは、社内だけでなく社外の採用市場においても強力なアピールポイントとなります。

現代の求職者は、単に給与や仕事内容だけでなく、「自分の人生を大切にしてくれる会社かどうか」を企業選びの重要な基準にしています。特に若い世代はワークライフバランスや自分らしい生き方を重視する傾向が強いため、柔軟な働き方を支援する企業は高く評価されます。

充実したライフデザイン支援の制度が整っていることを対外的に発信することで、企業のブランド価値が向上します。他社との差別化が明確になり、採用活動において自社の理念に共感する優秀な人材を集めやすくなるという大きな利点があります。


3.ライフデザイン経営を推進するための具体的な施策

ライフデザイン経営の概念を理解した後は、それを実際に社内の制度としてどのように落とし込むかが重要になります。理念を掲げるだけでなく、従業員が日常的に利用できる具体的な仕組みを用意しなければ、形骸化してしまう恐れがあります。従業員の年齢や家族構成によって必要なサポートは異なるため、多角的なアプローチを用意することが望ましいです。

ここでは、企業が取り組むべき代表的な支援施策を以下の表にまとめました。


支援のアプローチ

施策の具体例

解決できる従業員の課題

柔軟な働き方の提供

フレックスタイム制

リモートワーク

時短勤務

育児・介護と業務の時間的な両立の困難さ

情報と機会の提供

ライフデザインサービスの導入

金融リテラシー教育

将来のライフイベントに向けた資金や計画の不安

キャリアの自律支援

キャリアデザイン研修の実施

定期的な1on1面談

会社に依存しない主体的な人生設計の欠如


キャリアとライフの両立を支える柔軟な勤務制度の設計

従業員が人生の様々なステージにおいて仕事を続けられるようにするためには、時間や場所にとらわれない柔軟な勤務制度の設計が重要です。

育児や介護、自身の通院など、生活と仕事を両立しなければならない状況は誰にでも訪れる可能性があります。そのため、フレックスタイム制やリモートワーク、短時間勤務制度などを導入し、従業員自身が働き方をコントロールできる裁量を与えることが重要です。

単に制度を作るだけでなく、取得しやすい職場の雰囲気づくりや、業務の属人化を解消する仕組み作りも並行して進める必要があります。誰かが休んでもチームでカバーし合える体制を整えることで、気兼ねなく制度を利用できる環境が実現します。

従業員の人生設計をサポートするライフデザインサービスの活用

社内の人事制度だけではカバーしきれない専門的な領域については、外部の「ライフデザインサービス」を導入・活用することが効果的です。

経済産業省も、個人が人生の計画を自己決定しやすくするための情報や気づきを提供するサービスとして、これらを推奨しています。

例えば、専門家によるファイナンシャルプランニングの相談窓口や、女性特有の健康課題をサポートするオンライン診療サービスなどが挙げられます。企業が費用を負担してこれらのサービスを福利厚生として提供することで、従業員は安心して将来のライフイベントに備えることができます。

外部の専門的な知見を借りることで、人事担当者の負担を抑えつつ質の高い支援を提供できるという利点があります。

参考:ライフステージを支えるサービス活用による多様な人材活躍を推進するための情報発信を行うウェブサイトを開設しました ~ライフデザイン経営で、社員のウェルビーイングをサポート~ (METI/経済産業省)

【関連記事】健康経営で女性の健康支援が必要な理由は?施策やメリットを解説

キャリア自律を促す社内研修と定期的な1on1面談の実施

従業員が自分自身の人生をどのように生きたいかを考えるきっかけを作るために、社内研修や面談の機会を設けることも重要です。

日々の業務に追われる中では、中長期的なライフプランを考える機会は限られます。そこで、年代別のキャリアデザイン研修を実施し、自分の価値観や今後の目標を言語化するサポートを行います。さらに、上司との定期的な1on1面談を通じて、仕事の目標だけでなく個人のライフプランについても対話できる関係性を築きます。

会社が個人の人生の目標を理解し、それに向けた業務の割り当てやスキル開発の機会を提供することで、従業員の主体性とエンゲージメントが大きく高まります。


4.ライフデザイン経営の先進的な企業事例

従業員の多様な生き方や働き方を尊重し、企業がその実現をサポートする「ライフデザイン経営」は注目を集めています。ここでは、健康経営を通じて従業員のライフデザインを支援する先進的な事例をご紹介します。

フェムテックを活用した総合的なプログラム導入

丸紅株式会社では、女性の健康維持や増進を主要なテーマに掲げ、「丸紅フェムテックプログラム」を導入しています。

月経や妊娠、更年期など、女性が直面するさまざまな健康課題に対して、社内での啓発活動からオンライン診療までを一貫してサポートする体制を構築しました。これにより、従業員の生活の質の向上を目指すと同時に、働きやすい環境の提供につなげています。

多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる基盤を作ることは、一人ひとりの生活を豊かにするライフデザイン経営の一つの形と言えるでしょう。

【関連記事】健康経営で女性の健康支援が必要な理由は?施策やメリットを解説

伊藤忠商事など22社連携によるライフデザイン支援の事例

単独の企業だけでなく、複数の大企業が連携してライフデザイン経営を社会全体へ実装しようとする大規模な事例も誕生しています。

2026年3月には、伊藤忠商事や三菱UFJ銀行、パナソニックなどの大手企業22社が連携し、「Life Design Junction!」という取り組みを発足させました。

このプロジェクトは、企業間での知見共有やサービスの実証・共同開発を通じて、ライフデザイン支援の社会実装を推進することを目的としています。自社の中だけでは得られない幅広いキャリアの選択肢や知見を連携企業間で提供し合い、個人が主体的に人生設計を描くことを支援します。

社会の構造変化に対応するためには、企業単体の枠を超えたオープンな情報提供が有効であることを示す画期的な動きです。

参考:伊藤忠、MUFG、パナソニックら22社が連携。経産省「ライフデザイン経営」を社会実装へ | Business Insider Japan


5.ライフデザイン経営を自社に導入する手順

ここまでライフデザイン経営の魅力や事例をお伝えしてきましたが、実際に自社で始めるには何から手をつければよいのでしょうか。

無計画に新しい制度を乱立させても、現場の混乱を招いたり形骸化したりするリスクが高まります。確実な成果を出すためには、順序立てて少しずつ社内に浸透させていくプロセスが求められます。

以下の表に、導入に向けた基本的なステップと担当部署の役割をまとめました。


導入ステップ

実施する具体的なアクション

中心となる担当部署や役割

1. 方針の明文化

経営層によるライフデザイン支援の目的とコミットメントの発信

経営陣

経営企画部門

2. ニーズの把握

従業員へのアンケートや面談を通じた現状の課題の洗い出し

人事・労務部門

3. 施策の実行と検証

優先度の高い施策からのスモールスタートと定期的な見直し

人事部門

各部門の管理職


経営層のコミットメントと全社に向けた方針の明文化

ライフデザイン経営を成功させるための最初の関門は、経営トップが本気で取り組む姿勢を社内外に示すことです。

従業員の人生設計に踏み込むという新しいアプローチは、現場の管理職や従業員から「業務とは関係ないのではないか」と疑問を持たれる可能性もあります。そのため、経営層自らが「なぜ我が社が従業員のライフデザインを支援するのか」という目的と意義を自分の言葉で語ることが重要です。企業理念や中長期の経営計画の中にライフデザイン経営の考え方を明文化し、全社の共通認識として落とし込みます。

トップの強いコミットメントがあることで、人事部門も制度設計に動きやすくなり、従業員も安心して支援を受け入れる土壌が形成されます。

社内アンケートや面談を通じた従業員ニーズの正確な把握

経営の方針が固まったら、次にすべきことは自社の従業員が実際にどのような悩みを抱えているのかを正確に把握することです。経営陣や人事の思い込みで制度を作っても、現場のニーズとズレていれば全く利用されない残念な結果に終わってしまいます。

全従業員を対象とした無記名のアンケート調査を実施し、健康状態や働き方、将来のキャリアに関する本音を収集します。また、並行して各部署のリーダーによる個別面談を行い、アンケートだけでは見えてこない細かな事情や要望をヒアリングします。

世代や性別、職種によって抱える課題は大きく異なるため、データを丁寧に分析して自社特有の課題を可視化することが制度設計の重要な土台となります。

スモールスタートでの施策導入と定期的な効果検証の仕組み化

課題が明確になった後は、全ての制度を一度に完璧に整えようとするのではなく、できるところから小さく始めることが成功の秘訣です。

まずは解決の優先度が高く、かつ従業員の関心も強い課題に絞って、一つの支援サービスや新しい働き方の制度をテスト導入します。数ヶ月間運用した後に、利用した従業員からのフィードバックを集め、使い勝手や実際の効果を検証します。課題があれば柔軟に制度を修正し、効果が確認できれば対象範囲を広げたり、別の新しい施策を追加したりしていきます。

この「実行・検証・改善」のサイクルを組織内に定着させることで、時代や従業員の変化に合わせた持続可能なライフデザイン経営が実現します。



まとめ

この記事の要点をまとめます。
  • ライフデザイン経営は従業員のキャリアと人生の充実を支援する経営手法である
  • 離職の防止や心理的安全性の向上など企業と個人双方にメリットをもたらす
  • 柔軟な働き方の整備と経営トップの強いコミットメントが導入の鍵となる

自社の課題に合った支援策から少しずつスモールスタートし、従業員とともに成長できる持続可能な組織づくりを進めていきましょう。


<最後に>

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