健康診断の有所見率とは?全国平均の推移や企業が実践すべき改善策
健康診断の有所見率について、定義や全国平均の推移を解説します。有所見率を放置するリスクや項目別の傾向もまとめています。従業員の健康を守る対策も紹介していますので、自社の健康経営にお役立てください。
健康診断の有所見率とは、受診者のうち何らかの異常所見があると判定された人の割合を指します。この記事では、有所見率の定義や全国平均の推移に加えて、放置するリスクと企業が取るべき改善策を解説します。
1.健康診断における「有所見率」とは
有所見率は従業員の健康状態を測る指標です。定義や報告義務などの基本的な仕組みを整理します。
|
観点 |
要点 |
|
定義 |
健診で何らかの異常(所見あり)と判定された従業員の割合 |
|
判定基準 |
法令による統一基準はなく、実施する各健診機関の基準が適用される |
|
報告義務 |
常時50人以上の労働者を使用する事業場は労働基準監督署への報告が必須 |
-
定期健康診断で何らかの異常と判定された従業員の割合を指す
有所見率とは、定期健康診断において異常の所見があると診断された人の割合のことです。受診者全体のうち、要経過観察や要精密検査、要治療といった判定を受けた人が該当します。この数値が高いほど、健康課題を抱える従業員が組織内に多く存在している状態です。企業全体としての健康度を可視化する指標として機能します。
-
法令による統一基準はなく各健診機関の判定値が適用される
有所見の判定基準値について、国が定めた一律の数値はありません。実施先の健康診断機関が独自に設定した基準値に基づいて判定が行われます。同じ検査結果であっても、受診した機関によって「異常なし」となる場合と「要経過観察」となる場合が分かれます。そのため、企業内で経年変化を比較する際は、できる限り同じ健診機関を利用すると誤差が少なくなります。
-
常時50人以上の事業場は労働基準監督署へ結果を報告する義務がある
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、「定期健康診断結果報告書」を所轄の労働基準監督署へ提出する義務を負います。この報告書には、受診者数や有所見者数を検査項目ごとに記載して提出します。未提出や虚偽の報告を行った場合は、労働安全衛生法違反として罰則の対象となる恐れがあります。小規模な事業場であっても、従業員の健康状態を把握する目的で数値を集計し、自社の課題を分析する素材として扱うことが推奨されます。
参考:定期健康診断結果報告書を正しく提出しましょう!(記載例)|神奈川労働局
参考:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索(第十二章 罰則 第百二十条)
2.全国の有所見率はどのように推移している?
日本全体の労働者がどのような健康課題を抱えているのか、最新の統計から傾向を把握します。
|
観点 |
傾向・状況 |
|
全体の推移 |
過去10年以上にわたり上昇傾向が続き、全国平均は約60%に達する |
|
主な異常項目 |
血中脂質、血圧、肝機能など、生活習慣に関わる項目が上位を占める |
|
属性による違い |
年齢が上がるほど割合が高まり、業種や業務形態によっても差が生じる |
-
過去10年間で上昇傾向が続き全国平均は約60%に達している
厚生労働省が公表している「定期健康診断結果調」によると、全国の有所見率は年々上昇傾向にあります。令和7年(2025年)の調査では、全体の有所見率が約59.7%に達しています。働く人の過半数が何らかの健康上の異常を指摘されている状態です。高齢労働者の増加や生活習慣の変化が背景にあり、企業が従業員の健康管理に積極的に介入する必然性が高まっています。
参考:定期健康診断結果から見た有所見率の推移|石川労働局(出典:厚生労働省 定型統計)
-
検査項目別で見ると血中脂質や血圧の異常が上位を占める
項目別の結果に目を向けると、血中脂質や血圧、肝機能検査での異常が多く報告されています。厚生労働省の同調査でも、これらの項目が高い割合を示しています。いずれも運動不足や食生活の乱れ、過度な飲酒といった生活習慣と関わりの深い項目です。自覚症状がないまま進行するケースが多く、放置すると脳血管疾患や心疾患といった重篤な病気につながるおそれがあります。
-
業種や従業員の年齢層によって割合に明確な違いが生じている
有所見率は、年齢層や従事する業務の特性によってばらつきがあります。加齢に伴って代謝が落ちるため、中高年層の多い企業ほど全体の数値が高くなる傾向があります。業種別に見ると、道路旅客運送業や清掃と畜業、道路貨物運送業などで、有所見率が全産業の平均を大きく上回っています。全国平均と比較するだけでなく、自社の年齢構成や業務内容を踏まえたうえで数値を評価する視点が求められます。
3.有所見率が高い状態を放置する企業のリスク
健康診断の結果を本人任せにしてしまうと、組織全体に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
|
リスク分類 |
企業への影響 |
|
生産性の低下 |
プレゼンティーズム(不調を抱えたまま働く状態)による業務効率の悪化 |
|
人材の喪失 |
重篤な疾患の発症に伴う長期休職や、予期せぬ離職の発生 |
|
法的・社会的責任 |
健康管理を怠ったとみなされ、安全配慮義務違反に問われる |
-
心身の不調を抱えながら働くことで組織全体の生産性が低下する
健康上の異常を放置すると、プレゼンティーズム(出勤しているものの、心身の不調によってパフォーマンスが落ちている状態)が生じ、組織全体の生産性が低下するおそれがあります。プレゼンティーズムは目に見えにくいものの、企業にとって大きな損失です。集中力の低下によるミスの増加や、周囲の従業員への負担の偏りが発生します。結果として、残業時間の増加やチーム全体のモチベーション低下に繋がっていきます。
【関連記事】プレゼンティーズムとは?原因から測定方法・企業の対策事例まで解説
-
重篤な疾患への進行により長期休職や予期せぬ退職を引き起こす
初期の異常を放置して症状が悪化すると、突然倒れたり重篤な疾患で長期離脱したりするおそれがあります。生活習慣病は自覚症状が少ないまま進行し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす危険があります。中核を担う人材が突然休職や退職に追い込まれれば、業務の継続が困難になり採用や育成のコストも二重に発生します。早期発見の機会である健康診断の意義を活かせていない状態といえます。
-
健康状態の悪化を防げなかったとして安全配慮義務違反に問われる
企業には従業員が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」が労働契約法によって定められています。有所見者がいることを把握しながら適切な措置を講じず、その結果として従業員が倒れた場合、企業の過失が問われる恐れがあります。コンプライアンスの観点からも、結果に基づく事後措置を適切に講じることが重要です。
参考:労働契約法 | e-Gov 法令検索(第5条)
4.従業員の有所見率を改善するには
有所見率を下げるためには、組織的かつ継続的なアプローチを実践します。具体的なステップを整理します。
|
対策フェーズ |
具体的な対応 |
|
受診後のフォロー |
再検査・精密検査の受診を業務の一環としてルール化し勧奨する |
|
専門家との連携 |
産業医面談を実施し、労働時間の短縮や配置転換の措置を講じる |
|
健康意識の向上 |
検査結果に基づく健康セミナーを実施し、従業員自身の行動変容を促す |
|
日常的な予防策 |
法人向けフィットネスなどを活用し、従業員の運動習慣づくりを支援する |
-
再検査や精密検査の受診勧奨をルール化し確実に受診させる
要精密検査や要治療と判定された従業員に対しては、放置せずに医療機関の受診につなげる仕組みを作ります。本人は自覚症状がないため後回しにしがちです。人事や保健師から対象者へ直接受診を促すアプローチが有効になります。勤務時間中の受診を認めたり、費用の一部を会社が負担したりする制度を整えることで、受診のハードルを下げることが期待できます。
-
産業医との面談を実施し必要に応じて就業上の措置を講じる
健康状態に懸念がある従業員に対しては、速やかに産業医との面談を設定します。産業医の意見を基に、残業の制限、深夜業の免除、負担の少ない部署への配置転換といった就業上の措置を決定します。本人の同意を得ながら業務の調整を行うことで、症状の悪化を防ぎつつ働き続けられる環境づくりにつながります。企業が従業員の健康を第一に考えているというメッセージにも繋がるでしょう。
参考:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省
-
検査結果に基づく健康教育で従業員自身の行動変容を促す
有所見率を継続的に下げるには、従業員一人ひとりが自分の健康状態を正しく理解し、生活習慣を見直す必要があります。結果通知を配布するだけでは、数値の意味が十分に伝わらず、行動の変化につながりにくい傾向があります。健康セミナーを開き、検査結果の見方や改善のための具体的な方法を伝えると効果的です。
とくに、自社の有所見の傾向に合わせたテーマを選び、従業員が自分の結果と照らし合わせながら学べる形式にすると、自分ごととして受け止めやすくなります。オンライン形式にすればリモートワーク中の従業員も参加しやすくなります。年齢層の高い職場では、体力の低下や転倒の予防など、高齢の従業員に合わせた健康支援もあわせて検討するとよいでしょう。
-
スポーツクラブの法人契約などを活用し日常的な運動習慣の定着を促す
有所見率の根本的な改善には、日々の生活習慣を見直す一次予防への投資が重要です。社内で運動を推奨するだけでなく、スポーツクラブの法人会員制度を導入し、従業員が通いやすい環境を提供することが有効です。運動不足の解消は、血中脂質や血圧といった主要な異常項目の改善につながることが期待できます。
法人契約には、企業単位で年間契約を結ぶ形式や、福利厚生として従業員が割引価格で利用できる形式などがあります。少人数の企業であれば年間契約、従業員数の多い企業であれば割引型と、自社の規模に合わせて選ぶと導入しやすくなります。店舗に通いにくいリモートワーク中心の従業員向けに、オンラインで参加できるメニューがあるかどうかも比較のポイントです。福利厚生の一環として導入することで、従業員のエンゲージメント向上や採用時のアピールポイントとしての効果も期待できます。
まとめ
健康診断の有所見率は全国的に上昇傾向にあり、過半数の従業員が何らかの異常を抱えているのが現状です。企業がこの状態を放置すれば、生産性の低下や長期休職による人材喪失、さらには安全配慮義務違反といった深刻なリスクを背負い込むおそれがあります。
人事や総務担当者にとって、従業員一人ひとりの生活習慣を自力で管理し改善させることは大きな負担です。受診勧奨などの事後対応に加え、日常的に運動を継続できる環境を外部リソースを使って整えることが、持続可能な健康経営の鍵を握ります。
スポーツクラブ「メガロス」を運営する野村不動産ライフ&スポーツでは、企業の健康経営を支援する法人向けソリューションを提供しています。企業規模に合わせて選べる法人会員プランに加え、自社の健康課題に合わせた検査と結果解説を組み合わせた「じぶん検査&プレミアムセミナー」や、高齢の従業員が安心して働き続けるための「エイジフレンドリープログラム」もご用意しています。有所見率の改善に向けた施策をお探しの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▶野村不動産ライフ&スポーツの法人向け ソリューション|スポーツクラブ・スポーツジムの法人会員なら野村不動産ライフ&スポーツ
<最後に>
野村不動産ライフ&スポーツは、2024年2025年と連続でホワイト500を取得いたしました。また野村不動産グループ各社が健康経営優良法人認定取得に向けた施策実行をサポートしております。
今後健康経営優良法人認定の取得を進めるのであれば、認定取得を強力にサポートする【ALWEL(オルウェル)】というサービスをリリースしております。 ご興味ありましたら是非ご確認ください。



