プレゼンティーズムの測定方法5選|自社に合う選び方と事例を解説
従業員のパフォーマンス低下による見えない損失「プレゼンティーズム」の測定方法でお悩みの方へ。この記事では、WHO-HPQや東大1項目版などの代表的な5つの測定ツールの特徴、自社に最適な手法の選び方、測定結果を健康経営に活かす具体的な手順をわかりやすく解説します。読み終わると、自社に合った測定方法を選び、健康経営の第一歩を踏み出せるようになります。
従業員が出勤しているものの本来のパフォーマンスを発揮できていないという、見えない損失にお悩みの方に向けて、プレゼンティーズムの具体的な測定方法を解説します。
この記事では、代表的な5つのツールの特徴や自社に最適な手法の選び方を紹介しています。読み終わると、自社に合った測定方法を導入し、健康経営を前進させることができるようになります。
1.プレゼンティーズムとは
企業の生産性向上を考えるうえで、従業員の健康状態を正確に把握することは重要な課題といえます。近年、健康経営の分野で特に注目を集めているのがプレゼンティーズムという概念であり、多くの企業がその測定と改善に向けて動き出しています。
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プレゼンティーズムの基本的な意味
プレゼンティーズムとは、従業員が出勤しているにもかかわらず、心身の健康問題によって業務パフォーマンスが低下している状態を指します。
WHO(世界保健機関)によって提唱された概念であり、日本語では疾病就業と訳されることもあります。花粉症や肩こり、頭痛、あるいは軽度のメンタルヘルス不調など、休むほどではないと感じて無理をして働いている状態がこれに該当します。
見た目には通常通りに出社しているため、周囲の管理者や同僚からは問題が顕在化しにくいという特徴を持っています。そのため、組織全体でどれほどの生産性が失われているのかを把握するには、客観的なデータに基づく測定が必要になります。
【関連記事】プレゼンティーズムとは?原因から測定方法・企業の対策事例まで解説
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アブセンティーズムとの違い
プレゼンティーズムと対比される重要な概念として、アブセンティーズムが存在します。
アブセンティーズムは、病気や怪我などの健康問題によって、欠勤や休職、遅刻、早退を余儀なくされ、業務自体が行えない状態のことです。従業員が職場に不在となるため、勤怠管理のシステムなどを通じて損失を比較的簡単に数値化できます。
一方で、プレゼンティーズムは従業員が職場に存在しているにもかかわらず発生する損失です。勤怠データだけでは表面化しないため、専用のアンケートや質問票を用いて従業員自身の主観的な状態を引き出す必要があります。
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比較項目 |
プレゼンティーズム |
アブセンティーズム |
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状態の定義 |
出勤しているがパフォーマンスが低下している状態 |
健康問題により欠勤や休業をしている状態 |
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具体的な例 |
頭痛や肩こり、睡眠不足を抱えたままの業務 |
インフルエンザやメンタル不調による病欠 |
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可視化の難易度 |
表面化しにくく測定が難しい |
勤怠データから容易に把握できる |
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損失の規模 |
見えにくいが企業全体への影響は大きい傾向にある |
休業期間中の労働力が直接的に失われる |
【関連記事】アブセンティーズムとは?プレゼンティーズムとの違いや原因・対策を解説
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企業が抱える見えない損失の大きさ
出勤している従業員のパフォーマンス低下は、企業にとって非常に大きな経済的損失をもたらすことが明らかになっています。厚生労働省保険局が公開している「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」によると、企業の健康関連総コストのうち、プレゼンティーズムによる損失が約8割を占めるというデータが示されています。
医療費や病気休業によるコストよりも、不調を抱えながら働くことによる見えない損失のほうが大きいという事実は、多くの経営者や人事担当者に注目されています。この損失を放置し続けると、従業員の不調がさらに悪化し、結果的に長期休職などのアブセンティーズムに発展するリスクも高まります。そのため、まずは現状を適切に測定し、課題を浮き彫りにすることが健康経営の第一歩といえます。
2.プレゼンティーズムの代表的な測定方法
プレゼンティーズムを定量的に把握するためには、専門家や研究機関によって開発された信頼性の高い測定ツールを活用することが推奨されます。経済産業省のガイドラインなどでも紹介されている、代表的な5つの測定方法についてそれぞれの特徴を解説します。
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SPQ(東大1項目版)による簡便な測定
SPQ(Single-Item Presenteeism Question)は、東京大学の研究グループによって開発された測定方法です。最大の利点は、たった1つの質問に答えるだけでプレゼンティーズムによる生産性の損失割合を測定できる点にあります。
病気や怪我がない状態での仕事のパフォーマンスを100パーセントとした場合、過去4週間の自身のパフォーマンスが何パーセントだったかを従業員に評価してもらいます。設問が少ないため、毎年のストレスチェックや健康診断の問診票に簡単に追加でき、従業員と企業双方にとって導入ハードルが低い手法です。
参考:SPQ | The Single-Item Presenteeism Question
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WHO-HPQによるパフォーマンス評価
WHO-HPQ(世界保健機関 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙)は、WHOが開発した国際的な評価尺度です。0から10の11段階で、従業員自身の仕事のパフォーマンスを主観的に評価する形式をとっています。
この手法では、同僚の一般的なパフォーマンスと自身のパフォーマンスを比較する設問も含まれており、多角的な視点から現状を分析することができます。世界中で広く活用されているため、グローバル企業での導入や、海外の研究データと自社の数値を比較したい場合に適した測定方法です。
参考:RIOMH(産業医科大学産業医実務研修センター)「WHO-HPQ 世界保健機関 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(短縮版)日本語版」(PDF)
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WLQを用いた多角的な制約の把握
WLQ(Work Limitations Questionnaire)は、アメリカのタフツ大学で開発された調査票であり、健康問題が仕事に与える制約を詳細に測定します。特定の疾患に限定せず、業務上の時間管理、身体活動、集中力・対人関係、そして結果という4つの側面から、仕事における困難度を評価するのが特徴です。
日本語版の「WLQ-J」も提供されており、信頼性の高い指標として活用されています。設問数が比較的多く詳細なデータが得られるため、どの業務領域に健康問題が影響を及ぼしているのかを具体的に特定し、改善策を検討する際に役立ちます。
参考:J-STAGE(産業衛生学雑誌)「Work Limitations Questionnaire 日本語版(WLQ-J)の開発」(井田浩正ら, 2012)
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WFunによる労働機能障害の可視化
WFun(Work Functioning Impairment Scale)は、産業医科大学が開発した日本発の労働機能障害尺度です。このツールは、健康問題によって生じる「仕事上の機能障害の程度」を測定することに特化しています。
従業員がどれくらい業務に支障をきたしているかという客観的な状態を評価しやすいため、産業医や保健師が面談を行う際の参考データとしても活用しやすいという利点があります。日本人労働者の特性に合わせて設計されており、健康経営の実務において信頼できる指標の一つです。
参考:WFunの特徴
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QQメソッドでの質と量の測定
QQメソッド(Quantity-Quality method)は、仕事の「量(Quantity)」と「質(Quality)」の両面からプレゼンティーズムを測定する手法です。
健康問題がなかった場合の通常時のパフォーマンスを基準として、直近の体調不良時に仕事の量と質がそれぞれどの程度低下したかを従業員に尋ねます。量的な作業遅れだけでなく、ミスが増えたといった質的な低下も同時に把握できるため、業務への影響度合いを多面的に測定しやすい手法とされています。
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測定方法 |
開発元・特徴 |
設問の負担 |
主な活用シーン |
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SPQ(東大1項目版) |
東京大学開発。1問でパフォーマンスを評価 |
非常に少ない |
ストレスチェックへの追加など簡便な現状把握 |
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WHO-HPQ |
WHO開発。11段階評価で国際的な比較が可能 |
少ない |
グローバル基準での評価や他社データとの比較 |
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WLQ(WLQ-J) |
タフツ大学開発。4つの業務側面から制約を分析 |
やや多い |
業務領域ごとの具体的な課題特定と対策立案 |
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WFun |
産業医科大学開発。労働機能障害の程度を測定 |
少ない |
産業医面談の参考資料や国内向けの健康施策 |
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QQメソッド |
仕事の量と質の両面からパフォーマンス低下を評価 |
少ない |
業務の質的なミスや作業遅れの具体的な把握 |
3.自社に合った測定方法を選ぶためのポイント
ここまで紹介したように、プレゼンティーズムの測定方法にはさまざまな種類が存在します。どれを選ぶべきか迷う場合は、自社が何のために測定を行うのかという目的と、実施環境のバランスを考慮して決定することが大切です。
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調査の目的に応じた手法の選定
まずは、プレゼンティーズムを測定してどのような成果を得たいのかを明確にします。
会社全体の健康状態をざっくりと把握し、経営層に現状の損失規模を提示することが目的であれば、計算がシンプルで分かりやすいSPQ(東大1項目版)が適しています。
一方で、特定の部署にどのような業務上の制約が生じているのかを深く分析し、職場環境の改善や研修プログラムの導入といった具体的なアクションにつなげたい場合は、WLQのように多角的な評価が可能なツールを選ぶのが有益です。
目的とツールの特性が合致していないと、集めたデータが施策に結びつかず、単なる調査で終わってしまう恐れがあります。
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従業員の回答負担への配慮
測定方法を選ぶ際には、アンケートに回答する従業員の負担も考慮する必要があります。
設問数が多く回答に時間がかかるツールを頻繁に実施すると、従業員が面倒に感じてしまい、回答率の低下や適当な回答につながる可能性があります。
毎年実施しているストレスチェックや従業員満足度調査と同時に行う場合は、1問で完結するSPQや、設問数の少ないWHO-HPQ・WFunを採用することで、負担を最小限に抑えつつ継続的なデータ収集が可能になります。定期的に無理なく運用できる仕組みを作ることが、正確なデータの蓄積につながります。
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導入の目的と状況 |
推奨される測定方法 |
選定の理由 |
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はじめて測定を行う・手軽に導入したい |
SPQ(東大1項目版) |
1問のみで完結し、従業員の回答負担が最も軽いため |
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海外拠点を含めた比較を行いたい |
WHO-HPQ |
国際的な指標であり、グローバルでの比較分析が容易なため |
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業務のどの部分に支障があるか知りたい |
WLQ(WLQ-J) |
身体活動や精神面など、詳細な側面から制約を可視化できるため |
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産業保健スタッフの面談で活用したい |
WFun |
労働機能障害の程度を明確に測り、個別フォローに活かしやすいため |
4.測定結果を健康経営に活かす具体的な手順
測定ツールを導入してデータを集めた後は、その結果を実際の職場改善や健康施策に反映させることが求められます。データを活用してPDCAサイクルを回すための具体的な手順を解説します。
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データの集計と部署ごとの課題特定
アンケートを回収したら、まずは全社的なプレゼンティーズムの損失割合や損失額を算出します。次に、その結果を部署、年齢層、職種ごとに細かくクロス集計し、傾向を分析します。
例えば、営業部門ではメンタルヘルス不調によるパフォーマンス低下が顕著に表れ、製造部門では腰痛や肩こりといった身体的な不調による影響が大きいというような違いが見えてくることがあります。
単一の数字に一喜一憂するのではなく、どの属性の従業員がどのような課題を抱えているのかを浮き彫りにすることが重要です。
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働き方や職場環境の改善策の実行
課題が特定できたら、それに対する具体的な改善策を立案して実行に移します。
身体的な不調が多い部署に対しては、エルゴノミクス(人間工学)に基づいたオフィス家具の導入や、理学療法士を招いたストレッチセミナーの開催などが有効な選択肢となります。
メンタルヘルス不調が影響している場合は、管理職向けのラインケア研修の実施や、柔軟な働き方を促進するテレワーク制度の見直しなどを検討します。施策を実行した後は、翌年の測定でスコアがどう変化したかを確認し、効果検証を行うことで健康経営の質を高めていくことができます。
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手順のステップ |
具体的なアクション内容 |
期待される効果 |
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1. データの集計・可視化 |
ツールを用いて損失割合を算出し、部署や年代別にクロス集計を行う |
会社全体の損失規模と、重点的に対策すべきターゲット層が明確になる |
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2. 原因の深掘りとヒアリング |
スコアが悪化した部署の管理職と連携し、業務過多などの背景要因を探る |
数字だけでは見えない、現場のリアルな課題や職場環境の問題点を把握できる |
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3. 具体的な改善施策の実行 |
健康セミナーの開催、相談窓口の周知、労働時間の適正化などを実施する |
従業員のヘルスリテラシーが向上し、心身の不調を未然に防ぐ環境が整う |
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4. 効果測定と施策の見直し |
次年度に再度測定を行い、前年のスコアと比較して改善度合いを評価する |
有効だった施策を継続し、効果が薄かった部分を修正してPDCAを回せる |
5.企業におけるプレゼンティーズム対策の事例
ウェルビーイングの実現を目指し、従業員の健康課題を明確にして対策を進める企業が存在します。ここでは、具体的な指標をもとに健康経営を推進する取り組みについて見ていきましょう。
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測定結果をもとにした蝶理株式会社の改善事例
蝶理株式会社は中期経営計画でウェルビーイングの実現を掲げ、健康経営戦略マップを用いて課題の進捗を管理しています。
プレゼンティーズムの測定にはヒューマネージ社の独自尺度を取り入れ、仕事の実績や質などを数値化しました。その結果、2022年度に81%だった指標が2023年度以降は82%を維持し、2024年度全国平均である79.8%を上回る水準を保っています。
測定結果を細かく把握して健康課題に向き合う姿勢は、働きがいのある企業づくりを進めるうえで参考になる取り組みといえます。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
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適切な測定を通じて課題を可視化し、従業員が最大限の能力を発揮できる健康的な職場づくりを進めていきましょう。
<最後に>
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